転移失敗のはなし3
目標を達成
2017年1月5日
ノクターンノベルズにて『転移失敗』の連載を開始。
スタートダッシュは良好……どころの話ではなかった。
ロケットスタートと言っていいほどの好調ぶりだった。
単純に運がよかった。
姫初め企画の効果があった。
『聖騎士転生』からの誘導が功を奏した。
『なろう』向けジャンルが『ノクタ』でも受けた。
おそらくこれらが上手くかみ合ったことで、ランキングを駆け上がれたのだと思う。
半年におよぶ試行錯誤が、運良く実を結んだといったところだろう。
そして公開から8日後の1月13日。
新着メッセージが1件あります
初めて見る表示が、なろうのユーザーページに表示された。
もしや、と思いながらメッセージを開く。
書籍化打診のご連絡
よっしゃ来た!
ついにやったぞコンチクショウ!!
正月気分が明け切らないその日、ほーち先生は無言で拳を掲げた。
この時はまだ、エロ小説を書いていると誰にも話していなかったので。
それにしてもすごいスピードである。
いま確認したところ13日だと宝くじを当てて吉原でライラとやったあとなので、ヒロインすら出ていない。
一度異世界へ行って帰って来ているので、なんとなくのコンセプトは見せたものの、実里すら出ていない状態での打診である。
おそらくだが、やはりランキングやポイントの効果が大きかったのだろう。
最初の打診はKADOKAWAの所属レーベル、オシリス文庫からだった。
第2の打診
とにかく話を聞いて忌みようと思い、オシリス文庫と連絡を取り合う。
基本的に、メールである。
そして報酬の話を聞いた正直な感想だが
き、厳しいな……!
というのもオシリス文庫は電子書籍専門レーベルで、しかも当時はいまほど電子が売れていなかった。
のちの話になるが、別作品でカドカワブックスの担当者と話をしたとき
「電子印税はお小遣いくらいですけどねー」
といわれるような時代だったのだ。
なので、報酬が安いのはしょうがないのかなー……と思っていたところに、第2の打診があった。
レッドライジングブックス
一部の方々にとっては、思い出すのもつらい名前だろう。
簡単に説明すると、ものすごい勢いでなろう&ノクタ作品を書籍化したのち、ものすごく短い期間で倒産してしまったレーベルだ。
そのため、かなり売れているのに続刊できない、書籍化作業を進めていたのに発売できない、ということで涙を飲んだ作家が多数おられたのだ。
ただ、当時のほーち先生にそんな未来の出来事を予見できるわけもなく、紙の書籍が出せるということでホイホイついていこうとした。
その旨をオシリス文庫の担当に伝えたところ、こちらの意志を尊重するとしながら
「うちも提携先で出せますけどね!」
と返ってきた。
となれば、あとは条件次第……ということで話を進めていたのだが、レッドライジング側で調整がうまくいかないとかなんとかそんな理由でお断りされてしまった。
そんなわけで、『転移失敗』はオシリス文庫から発売されることが決まった。
途中レッドライジングブックスが割り込んでくれたおかげかどうかはわからないが、ビギニングノベルズから紙の書籍が出せることも、早々に決まったのだった。
なお、レッドライジングブックスはその年の秋ごろに新刊発売停止を発表。
2019年にレーベル所属先の出版社であるリンダパブリッシャースが消滅した。
第3の打診とその後のいろいろ
1月13日にオシリス文庫から、17日にレッドライジングブックスから打診を受けたあと、26日にも書籍化打診のお知らせがあった。
相手はヴァリアントノベルズ。
竹書房所属のレーベルである。
そう、あの竹書房。
この時点でオシリスかレッドライジングかの二択で悩んでいたので、よっぽどの条件でないとお断りしなくてはなぁ、と思っていた。
ただ、打診メールをよく見たところ、作品名が書いていなかった。
とはいえランキングやポイントを考えると『転移失敗』への打診に決まっているだろう。
まさかこのタイミングで『聖騎士転生』を選ぶ物好きはおるまいと、とりあえず確認をとった。
さすが竹書房、物好きだった
そんなわけでほぼ同時期に『聖騎士転生』の書籍化も決まった。
また『転移失敗』の成功を受け「行ったり来たり系はやはりウケる!」と確信した平尾氏は、『魔物がうろつく~』を早々に完結させ、同作の主人公を異世界に飛ばして行ったり来たりさせる作品を書いた。
その作品がこれだ。
アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります
『魔物がうろつく~』完結と同時に誘導した効果もあり、そこそこいい結果になった。
なお、この時点で平尾氏=ほーち先生を公言していなかったので、『転移失敗』からの誘導はなかった。
『アラフォーおっさん異世界へ~』は半月ほどで1万ポイントを超え、ひと月足らずでカドカワブックスより打診があり、こちらも無事書籍化を果たすことができたのだった。
この2作品についてはまた別の機会に語りたいと思う。
ということで、次回は『転移失敗』書籍化にあたって発生したレーベルのレギュレーション(表現規定)問題について語っていこうと思う。
先に言っておくと、オシリス文庫は小説レーベルのなかでもトップクラスに厳しいレギュレーションを持っており、ほーち先生はそれに随分悩まされることになるのだった。