【火水未済】初爻【火沢睽】
どうも、平尾です。
台車がね、重くなるんですよ。
作業工程で高温の蒸気に当てられるんです。
するとタイヤの潤滑油が落ちて、動きが鈍るんです。
台車自体、数十キロはある大きなものです。
そこへ数百キロの製品を載せた状態でタイヤが回らなくなると、本当に重いんです。
だから、月に一度くらいのペースで、油を差すのですよ。
先月から新人さんの教育をしています。
俺よりひと回りほど年上の男性です。
今日は時間が余ったので、主任さんに頼んで潤滑油のスプレーを2本、出してもらいました。
俺と新人さんは他の人よりも出勤~退勤が1時間遅いので、作業途中に主任さんは帰ってしまいます。
なので、この2本のスプレーで約50台の台車すべてのメンテナンスを行う必要があります。
とはいえ、普段はひとりでやってますし、1.5本分くらいで完了できるので、問題ないでしょう。
「動きが悪いヤツは多めに使って大丈夫なんで、よろしくお願いしますね」
手順を教えたあと、俺は冷蔵庫にある三十数台をやり、新人さんには作業場にある十数台をやってもらうことにしました。
スプレー2本、量は充分。
2人で手分けすれば時間の余裕も生まれるし、動きのいいヤツにも予防的に多くスプレーしとくぜ!
という感じで、俺は冷蔵庫に篭もりました。
調子に乗ると、完了しない
庫内の台車が残り5~6台になったころ、新人さんが冷蔵庫へ。
おう、もう終わりましたか。
数、ちょっと少ないですもんね。
「すみません、スプレーなくなりました」
……なんですと?
「えっと、作業場のは全部終わったんですよね?」
「いえ、ここまではやりましたけど……」
ひぃふぅみぃ……11台か。
えっ、11台!?
節約すれば1本で50台いけるスプレーが、11台で空に!?
「なんか、全然動きがよくならないのがあって、それに結構使っちゃいましたね」
いや、動き悪いヤツには多く使っていいとは言いましたが……。
「それで、その、新しいのを……」
「ないです」
「ええっ!?」
潤滑油は主任以上の権限がないと持ち出せないのです。
ヒラのフリーターが勝手に持ち出しちゃいけないのです。
っていうか一緒に許可取りにいきましたやん!
でもって主任さんはもう帰ってまずぜ。
というわけで、残りは俺のスプレーを節約しながら、なんとかやり終えました。
本当はもっとたっぷり油を差してやりたかったので、ちょっとばかり消化不良な、まさに【未済(びせい)】という感じでした。
かみ合わず、すれ違う
【火水未済(かすいびせい)】は【水】の上に【火】があり、【火沢睽(かたくけい)】は【沢】の上に【火】がある象(かたち)です。
【沢】は属性でいうと【金】なのですが、湖や池を表す以上【水】の気も持っています。
【火】の気は上へ、【水】の気は下へ向かうため、お互いに交わりません。
先日出た【天地否】のような【天】と【地】ほどの開きはないので、ちょっとした意見の食い違いや考えのすれ違い、という具合でしょうか。
「動きの悪いヤツには多く使っていいですよ」
と伝えはしましたが
「作業場にある分は1本で全部やってくださいね」
とは伝えていませんでした。
言わなくてもわかるだろうと調子に乗っていたんですね。
その結果、こちらの意図が正しく伝わらず、望んだ成果を得られなかった。
易が告げた【火沢睽】の意図ちゃんとくみ取っていれば、回避できた失敗だったなぁ。
まさに小狐が川を済(わた)り切れず、尻尾を少し濡らすことになってしまったのでした。
ではまた明日!


